2010年10月27日水曜日

メルセデスAクラスとNECAR3

 90年代に入って水素をエネルギー源に燃料電池を搭載した燃料電池車が現れ始めました。日本の各自動車メーカーも試験車両を登場させましたが、1997年に生まれたメルセデス・ベンツの小型車Aクラスをベースとした「NECAR3」がそのコンセプトが際だっていました。本来は衝突安全性確保のために考案された、フロアを二重とするいわゆる“サンドイッチ”構造を利して、フロア部分に燃料電池システムを組み込んでいたので、システムのキャビンへの侵食が抑えられていたため、他社のSUVやミニバンなどベース(フレーム構造を利用したためです)としてスペースを確保した大柄なテスト車とは一線を画していたことが印象に残っています。二次電池(電力を貯えるバッテリー)を持たないため、瞬間的にパワーをさせたり、回生エネルギーを貯えることはできませんでしたが、電動車独特の静粛性や重量増加による重心の低さなど、特別なクルマを動かしている感覚に満ちていました。
 ただし、NECAR3に限らず燃料電池システムのコストの高さから(テスト車両は1台、億を超える代物でした)実証実験は世界各国で実施されてはいても販売という段階には至っていません。
技術的にはすでに完成していますから、将来、2020~30年、いや2050年あたりでやってくるはずの水素社会ではこちらが主役になるはず……という意見が主流ですが、はたしてバッテリー駆動の電気自動車がその時点でどれだけ進歩しているのかが気になります。ちなみに、メルセデスは今年、同じくAクラスにリチウムイオン・バッテリーを搭載した「E-CELL」を発表しました(燃料電池車はBクラスの「F-CELL」に変更)。いったい、走りはどれほどの違いがあるのか、興味深いところです。今は、電気自動車ではバッテリー搭載のいわゆる“ピュア”EVが優勢ですが、リサイクルの問題など、優位性が絶対的なものだとは思っていません。航続距離の限界、たとえば200kmを「現実的」に超えるようなEVはそうはないのが現状なのですから、広くモビリティ(移動の自由)を考えれば、インフラの問題はあるにせよ、燃料電池車の可能性はやはり捨てがたいと思うのですが、いかがでしょうか。

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